おっさんとバイト

春から社会人になる。
俺は小学3年生の担任を持つことになるらしい。
他人事のようだが、本当にそれくらい実感がない。というのも決まったのが今月の初めだったからだ。

同時に4年間続けたバイトを今月で辞めた。
1番お世話になった46歳の契約社員のおっさんに「物腰は低く、プライドは高く」って教えてもらったことを、今ふと思い出した。
そのおっさんは本当に仕事の出来ない人で、その人の仕事をよく俺が代わりにやったりしていた。俺ももちろん早く帰りたいから渋々ながら初めのうちは代わっていたが、何せ、バイトの男が俺1人だったため、そのおっさんとはよく話した。
っていうかめっちゃ話しかけてきた。周りの社員とも歳がかなり離れていたのもあって、心細かったのだろう。そのほとんどがふざけたことばかり言うひょうきんなおっさんだったが、そのおかげでバイトが少し楽しくなった。
話す中で、歳がうちの親父と同じなこと、めっちゃ歯が汚いところ、子どもの頃見ていた漫画が同じなところ、などうちの親父に似てる部分が見えてきて、なんとなく親父と話ししている気分になった。
(実際には親父よりも良い人だった)
そんなおっさんが唯一、まともなことを言ったことがある。俺がお客さんからクレームをくらった時に、素直にすみませんでしたと謝ることが出来なかった。事務所で反省しているその時に、おっさんが「物腰は低く、プライドは高く」と一言だけ言ってレジに戻って行ったことを今でも鮮明に覚えている。
何故だかその時、とても自分の中で響いたその言葉が、それからもレジに立つたびに思い出す。

おっさんがどういう想いで言ったのかは知らないが、俺にとってはとても大事な事のような気がして、今までその言葉を忘れずに生きてきた。そして、それはこれからも忘れることはないと思う。

春から社会人になる。
俺は俺なりのやり方でひたむきに頑張りたい。